信頼が生まれる瞬間

本質を見ることの大切さ

本日は知人の老夫婦に同行し、とあるクリニックに受診をしました。受診先はネットで調べて予約し、紹介状とMRIデータ持参の上での計画受診でした。目的は、認知症のご主人を献身的に介護されている奥様が信頼できる医師に巡りあう為でした。

診察室での医師の発言は、期待とは程遠いものでした。私が家族では無いということで、「個人情報の関係があるのでご家族としては同席してもらってもいいのですか?」との問いに家族は明確に「はい」と回答。その後私が「上手く症状など表現できない部分は代弁してお伝えしますね」とお話ししたところ、「私は家族と話をする」「窓口は一本にして欲しい」「あんたにするなら委任状が必要だ」「同席するのは勝手だが家族の情報ではないから」などなど。私の「家族が横で聞かれ同意しながらですが問題ですか?」の問いにも「法律上の家族でないので」と話がズレてくる。情報の有効性も確認せず交わされる言葉はHow Toばかり。

患者の詳しい情報を得ることより、窓口一本化という主張を強い語気で繰り返され、何故わざわざ私を同行させているかという“家族の気持ち”には全く関心がない状態でした。「その点了解してもらった上で今から診察を始めます」と言われた時点で、目的が達成できないと判断し診察をお断りしました。

時すでに11:15過ぎ。

すぐにタクシーに乗って7分ほど離れた別のクリニックへ、当然ですが予約は入れていません。
受付の方々の優しいこと。私が知人であることも承知の上で「患者さんが何かあった時に緊急連絡先を教えておいてもらえますか」と事務員。次に診察前の看護師の問診でも私が記した情報書を「詳しくて助かります」と受け取られる。この段階でまだ医師とは会っていない訳ですが、職員の行動や発言だけでも何を大切にされているのかが感じとれます。

そして診察はまさに「大事にしてくれている」ことを感じさせる診察でした。
出来るだけ正確な情報を得たく私に確認され電子カルテに入力されます。気になった情報を得る度に、患者の眼球の動き、咽頭の動き、手足の可動域、打鍵テスト、長谷川式スケールを適宜展開されます(まさに診察のデザイン)。

何よりも患者に向き合って「どこが一番つらいですか?」と聞かれ、沈黙を待ち続けてくれたのです。認知症が進み発言がままならないご本人ですが、医師が受け止めてくれている感覚を得たのでしょう、少し涙目になりながら自分の辛さを語り始めました。最終的には、私が内心課題に思っていた案件に対し、医師も気づかれ内服薬の再調整という診察結果でした。

クリニックを出たのは12:30過ぎ、心残る診察でした。そして誰よりも喜ばれたのは奥様です。「ずっとずっと疑問でね、もう疲弊しかかっていたのよ」でも先生に救われた感じがしたと。この言葉、家族が何とか一歩を踏み出した事を表しています。

「診察とは、いったい誰の為のものなのか」これが共有できると方法や解釈の仕方に変化を生むことを体感した一日でした。

“院内風土”それは、職員の表情、自然な動き、とっさの対応、相互の合図地などを見ているとリアルに感じ取れるものなのだと改めて実感します。ご家族は「実は診察前に受付で医師が事務員を叱っていて気になっていた」とのこと、あの瞬間が全てを物語っていた事を痛感します。

寄稿記事

デイサービス・デイケア

日総研「通所&施設マネジメント」11月号にアップされました。

私は、「要介護度維持・改善必須!アウトカム評価が求められる通所サービスが進むべき道」について書かせて頂きました。

出来るだけ現場の実態も合わせて反映させたく、多くの事業所様にご意見を伺わせて頂き本当にありがとうございました。

自立支援とは、ご本人が捉える”自分らしさ”とはどういうものなのかを共有させて頂くことから始まる事を実感します。

そしてそれらを事業所側がどう解釈しサービスに反映させていけるかが問われてきます。

”事業所らしさ”を再設定する時期かもしれませんね。

抜版を少し用意しました。ご希望でしたらお問い合わせにコメントを頂ければ郵送させて頂きます(無料)。

こどもの関心をシフトする

痛みから楽しみへ

コンサル先クリニックの一つの課題は、水いぼ治療のためのお子さんの対応でした。

瞬間ですが痛みを伴うために大泣きです。特に再診の場合は前回の事を覚えているので全身をくねらせ嫌がる子も少なくありません。

さてさて困ったものだなと。見ている周囲も心が痛く、かつ診察時間が大幅に狂うということもしばしば。

しかし”周囲の何かに興味を持った瞬間に泣きやむ”ところに着目し、関心を他ごとに向ける取り組みを行いました。

それがこのガチャガチャです。

コインをもらった瞬間に気持ちはすでにガチャガチャです。

ピタ!と泣きやみ処置がスムーズ、最後に「ん?思ったほど痛くないぞ」といった表情を見せてくれます。

定期研修から創りたいものは

変化のフィードバック

今月のクリニックの勉強会は、”ことば” についてのワークショップを実施しました。はや12回目を迎え1年が経過します。

勉強会の起源は、”本来私たちはどうあるべきであろうか” をともに学び感じながら成長していく時間が必要だと感じたからです。

ありがたいことに成績が伸びるということは、顧客から一定の支持を頂いているということです。ではその支持の源というと、設備、サービス内容が良い事はもちろんですが、それを提供している人、いわゆるそこに集う職員がどのような気持ちで仕事に携わっているかが重要です。

最初は業務多忙と参加に後ろ向きだった職員も、回を重ねるごとに ”価値観の共有と創造” の必要性を肌で感じてくれるようになっていきました。

そしてやっと、今月回収の受診者アンケートに「オープンからずっと利用しているが、今年は何かが違うような気がする、一番良かった」というご意見を2件頂きました。それを聞いて一番驚いているのは、当事者である職員の皆さんです。徐々に変化していくマインドセットは、自分達では気づかないのかもしれませんね。

それを見抜くのは、1年に1度ご利用下さる受診者の方なのでしょう。
次に気づかれたのは管理者の方です。「確かに以前と違うと、例えば提案が増えた、笑顔が増えた、会議での理解が進みやすくなった、提案に対する受け入れが良くなった」などなど。

勉強会では、職員同士の対話をメインに学びが深まるよう設計するのですが、ポイントは、テーマはクリニックの中から探すということです。そのためラウンドしヒヤリングすることでテーマが決まってきます。課題となっていること、関心があること、誰も気づかれていないが必要だと感じた事などを取り上げます。

今回は、”ことば” を大切に取り扱うという気持ちが持てたら、さらに関係性が促進するなと思ったからです。結果は受診者の反応に表れてきます。