人間の皮膚は表皮、真皮、皮下脂肪組織の三層構造から
なり、真皮には血管やリンパ管、神経が存在しています。
若いときは、真皮の弾性線維が豊富で、表皮と真皮も
しっかりくっついていますが、年齢を重ねると弾力成分が
減って表皮と真皮の層が薄くなり、まるで透明なフィルムを
張りつめていて、今にも破れそうな状態になります。
真皮内の血管周囲組織も弱くなっているので、少しの力で
血管が切れ内出血が起こり打撲跡の原因となります。
また皮膚が紙のように容易に裂けてしまうのです。
訪問先の有料老人ホームにて、
移乗時における裂創事故発生後の対応です。
早々、責任者、看護師、リーダーで検討に入ります。
ご入居者にも協力願い、居室にて現場を再現してみました。
介護技術力以外の発生要因に注目します。
ベッドの高さと入居者の立位時の高さを測定し、車いすや
ベッドと接点がありそうな3ヶ所にはクッション材を設置。
また移乗時には必ずプロテクターを装着することを前提に
ご本人用のマニュアルを作成しました。
リスクマネジメントの原則は、発生現場での振り返りです。
想定ではなく、可能な限り事実を検証することで、
実現可能な対策を導き出すことが可能となります。
そしてもっとも大切なことは、
不安や苦痛を与えてしまったご本人とご家族に
検証結果と対策を説明し、 介護への理解を得ることです。