<コミュニケーションの理論と多彩な実践>
コミュニケーションには言語と非言語がありますが、往々にして言語コミュニケーションは自分中心になりがちだという事を意識しなければならないと思います。
情報提供する場合、自分が関心を持ったことを中心に伝えようとする傾向があるからです。
しかしその内容は、必ずしも相手が知りたいことと一致しない場合があります。
提供したい内容がある場合、相手の頭の中が整理できるように順序立てて伝えなければ相手が理解できずコミュニケーションが成立したとは言えません。
時に相手の受け止め方次第では凶器になりえる事も含め、意識した正しいコミュニケーションが必要です。
では正しくコミュニケーションがとれなければどうなるのでしょうか。
親子問題を見ていると、親の“つもり”という思い込み、愛情をかけたつもりだったが、受け止める側が愛されていると感じられなければ成立しないという事です。
社会問題を見ていると、うつ病の急増はコミュニケーションが希薄化した社会が要因でもあります。人の接し方すら知らぬまま成長してしまう、あるいは間接的にコンタクトがとれるツールや遊びが存在する現代社会ですが、一歩踏み外すと立ち上がる術も知らなかったということになります。
さて介護現場ではどうでしょう。
情報交換(申し送り)、事故、人間関係などあらゆる場面において問題が浮上します。
浮上している問題はあくまでも結果論で、その根底にあるのは、ところどころコミュニケーションという配線が機能していない事にあります。
そしてこの断線しているコミュニケーションという経路を整理することが私の仕事の初期段階でもあります。
<高齢者のライフスタイルとスリープマネジメント>
眠りについての科学的根拠を知ることで、施設運営に工夫ができることを感じました。
エネルギー保存というメカニズム、電気毛布の使い方、夕方の軽い運動やレクリエーション、寝る前のダウンライト、パジャマへ着替える条件変化、太陽の光などが体内時計へとつながります。
腹式呼吸などリズミカルな動作がセロトニンが分泌され感情を安定させます。
施設時計と体内時計を連動させる視点で日課や関わりを再検討する意義は大きいと思います。
眠りが浅い方、昼夜逆転傾向の方などに対し、睡眠薬処方のその前にやるべき事があります。
<日本の社会と高齢者の生活文化の背景>
今の高齢者の特性としては、遠慮や我慢をされ、他人に対してなかなか本心を表現されない傾向があります。
これは農耕民族で一つの土地で生活してきたこと、そのため共同体感覚である村意識により人間関係を保ってきたからだと言われています。
公共心が備わっているため、周囲への気づかいが第一優先になります。
一方現在の若者は個人主義であり周囲を意識することなく自身のやりたい事を思った時に行動する傾向が強いです。
これは社会が豊かになり、個人を主張する余裕が出てきたことによると言われていますが、反面他人を気遣うやさしさやさりげなさが失われつつあります。
大家族で暮らしていた時代は、一つのものを皆で使う、分け合う事から相手を気遣う習慣が身についていましたが、現在では一人で一つのものが与えられることもあって、自身の欲求を満たすことが先行されがちです。
私達が関わらせて頂いているのは、感情を表に出さないことを美徳とした高齢者であるという事を意識しなければなりません。ご自分のやりたいことを口に出す事が少ない方々です。
そのような方々に対し周りの者は、「訴えが少ない良い人」と勘違いしていないでしょうか。
本心にある願いを汲み取りきれていないだけではありませんか。
そう考えると「こうして欲しい」という訴えがとてもありがたく感じます。
答えを下さっているのですから。
正直望みをお聞きすると「早くあの世のお迎えがきてくれたらいい」とおっしゃる方が一人や二人ではありません。
やはり自分で自分の時間が組めない、やりたくても出来ない、やれるのにやらせてもらえない、やりたい事がない、こんな思いが含まれているような気がします。
何とかしたいと強く感じた。