「ダイバージョナルセラピー養成講座」を受講して(11月)

<認知症や特別なニーズを持つ人への配慮と工夫>
人には、障害を受けたり高齢になっても、感性を持ち(過去の歴史や思い出の蓄積)、より良く生きようとする本能が存在します。その為その能力を見抜き働きかける周囲人の力量こそが、後の人生を左右する現実があり、改めて専門家としての責任を痛感致します。

本来その評価には経験則だけでなく客観的な根拠をおさえる必要があります。
医療でいうと、科学的材料であるCT画像より、ダメージを受けている部分と残された部分を考慮し「新たな可能性や働きかけはないか」という分析視点をもつなどです。

福祉でいうとその人がどのような生活をしてきたのか、その背景をとことん知るアセスメントが重要であり、この客観的データこそが、本人の心を納得させ、満足感のある介護につながるのだと思います。

10人十色とは良く言ったものです。
私はレクリエーションで関わる場合、可能なら大きさ、色、形など選べる材料を準備するようにしています。
その時に「あ~この方はこんな色が好きだったんだ」と瞬時にアセスメントしたり新たな一面を知ることが出来るからです。
常に個と向き合うその瞬間で有意義に関わりたいと考えながら接しています。

人の脳にはミラー細胞と呼ばれ、他人の行動をみて共感できる細胞があります。
私達の思いが本物でないと相手を動かすことはできないという事です。

接遇研修で挨拶の仕方や言葉遣いを徹底的に教育すると、一般的に第一印象が良い為喜ばれます。
しかし時に丁寧ですが儀礼的に感じるのは私だけでしょうか。

教えられた挨拶や言葉かけで出迎えてくれていても、その人から伝わる”思いやり”の気持ちが存在しないと相手の感情は動かせないだろうと思います。
私でさえそう感じるのだから、日々介護を待って生活されている方ほど、残された5感が研ぎ澄まされ相手を見抜かれているのではないでしょうか。

私は介護に携わるその瞬間の気持ちと接遇そのものが同じである意味をとことん伝えていきたいと思います。

<高齢者の心と行動>
レスポデント行動とは特定の刺激によって誘発される行動であり、自ら止める事はできません。
一方、オペラント行動は、何も刺激を与えなくても自発される能動の部分です。

この能動とその結果が「こころ」の必要条件を構成するとの事です。
結果の大きさや結果が伴う確率はやる気につながる。
結果の伴い方は熱中や生きがいにつながる。
結果の質は価値の生成につながる。
逆に結果が上手く伴わないとやる気が消去されてしまう。

当然のことながら、歳をとって体力が衰え、機能喪失や環境変化が起こると、いままで出来ていた事ができなくなり、能動的な行動は消去され不活発になってしまいます。
逆に、何かに取り組んでもらい達成した喜びはやる気の強化となり、自発へとつながっていくでしょう。

だからこそ私達は、本人の能動に響く材料を見つけ、それを達成する為の環境作りに終始しようとします。
そのベースはやはり、相手を知ること、アセスメントだと思うのです。

<脳科学の視点での認知症理解>
「細胞」「神経」といった人間を現す最小単位に目を向ける事は、認知症という疾患を客観的に見ることができる新たな視点です。普段行っている対応がどのように影響しているのかという理解につながります。

人間の脳細胞は通常加齢によって脱落しますが、記憶した事を忘れないのは、残存している神経細胞間で新たなネットワークが作られその記憶や行動などを維持しようと働くからです(可逆性)。
認知症の原因は、この可塑性を上回って、神経機能低下(神経細胞の脱落)が引き起こされることによるとされています。

普段私達の介護は周辺症状への対応を行う事で、本人に安定した生活を送っていただく努力を行っています。
実はこの関わりが残存細胞に働きかけ新しいネットワークを築き上げているのです。
ある面で”施設の介護レベル”は”認知症の進行程度”により評価されるとも言えます。

ダイバージョナルセラピーの活動とは、本人の「快」の部分に焦点をあて5感を通じて情動へ働きかける中、ネットワークに連動しています。
これには本人が感じたい「快」の部分、訴求点をしらなければ成立しないところが、一般的に行われるレクリエーションとの違いであると考ています。