テーマ3 個人に向けた支援
こんなにも違う?!患者への向き合い方(後編)
職員から伝わるクリニックの方針
大通りまでヨタヨタと歩き、時すでに11:15過ぎです。
歩きながら、担当のケアマネに事情を説明し、少し離れたCクリニックの情報をもらいました。
念のため電話で確認すると、12時まで来院すれば診ていただけるとのことでした。
「見つかるまで探せば良いので安心してください」
すぐにタクシーに乗り7分ほど離れたCクリニックへ向かいました。
当然ですが予約は入れていません。
11時45分ごろに到着し、診察券を出した時です。
受付の方々の優しいことに驚きました。
「ごゆっくりどうぞ」
私が知人であることも説明します。
「そうですか」
「では、患者さんに何かあった時の緊急連絡先として、貴方様の電話番号を教えておいてもらえますか」
次に診察前の看護師の問診時です。
私が記した情報書を手渡しました。
ご本人のレベル、日常生活の送り方など、アセスメント情報です。
「ありがとうございます。詳しくて助かります」
看護師が受け取り、カルテに挟みます。
この段階では、まだ医師とは会っていません。
しかしながら、職員の迷いない自主的な行動や発言から、日頃からCクリニックが大切にされようとしている方針が感じとれます。
心に残った診察
そして診察はまさに「大事にしてくれている」ことを感じさせる診察でした。
「こんにちは」
「紹介状を読ませてもらいました」
「もう少し症状を詳しく診させてくださいね」
C医師は、出来るだけ正確な情報を得よとされます。
家族に質問し、それに補足があればと私に確認され、その一つ一つの情報を電子カルテに入力されます。
気になった情報を得る度に、本人の身体へ戻るのです。
患者の眼球の動き、咽頭の動き、手足の可動域、打鍵テスト、長谷川式スケールを適宜実施されます。
まさに情報と診察を織り交ぜた、無駄のない診察のデザインが展開されていくのです。
何よりも心に残ったことです。
医師は椅子の向きを、患者の正面に合わせ患者に質問してくれたのです。
「どこが一番つらいですか?」
「・・・・・・・・・・・・」
そして、沈黙を待ち続けてくれたのです。
認知症が進み、発言がままならないご本人ですが、医師が受け止めてくれている感覚を得たのでしょう。
少し涙目になりながら、自分の辛さを語り始めました。
奥様が大きく頷かれています。
また、私は内心、処方されている内服薬の一つに疑問を感じていたことがありました。
C医師に直接お話しした訳ではありませんが、順を追って症状を説明したところ、内服薬の再調整という診察結果となりました。
クリニックを出たのは12:30過ぎです。
まさに、心残る診察でした。
主役は患者と家族
誰よりも喜ばれたのは奥様です。
「ずっとずっと疑問でね、もう疲弊しかかっていたのよ」
「でも先生に救われた感じがした」
この言葉は、家族が何とか一歩を踏み出した事を表しています。
「診察とは、いったい誰の為のものなのか」
これが共有できると、方法や解釈の仕方に変化を生むことを体感した一日でした。
“院内風土”
それは職員の表情や動き、とっさの対応、相互の合図地などを見ているとリアルに感じ取れると実感します。
帰りのタクシーの中で奥様がつぶやきます。
「Aクリニック、待っている間に先生が受付の子を叱ってたでしょう」
「実は気になったのよ」
あの瞬間が全てを物語っていた事を痛感します。