テーマ1 ママの医療

【第7回】検査結果と治療方針

診察室から始まる

診察に呼ばれ立ち上がり、母の前後に私たちが囲むように歩いていきます。

「死刑台に上る気分やわ」
まさに今の母の受け止めです。
何もかも真っ暗にしか見えない、諦めの心境なのだと思います。

私はというと、多臓器に転移していなければいいなと考えていたのです。
下痢の症状があったので、大腸が気になっていました。
今後の治療や予後に影響してくるからです。

自分に言い聞かせながら頭で考える私と、こころで感じる母。
母のように、気持ちに余裕のない今の状態では、先生の話も入ってこないだろうなと思います。
こんな時、誰かが側にいて、重要な情報を受け止め、質問する役割の人がいるべきだと思いました。

PET結果は、胃、肺、臀部皮下にメラノーマの多発再発の疑いとのことです。
一方、20年前の足のメラノーマ部分の再発、それに伴うリンパ節などの再発はないそうです。
ただ長い時間をかけた、血行性転移だろうとのことです。

最悪な結果には変わりはありません。
しかし、臀部皮下への転移はあるが、大腸に比べたら良かったと思えます。
足の再発が無かったということは、がん細胞が20年以上悪さをせずに、私達に時間をくれた訳です。
こんな状況下でも、見えるものがあるなと感じました。

治療の説明

これまでのがん治療は、直接がんを標的にした治療法です。
一方がん免疫療法とは、薬が直接がん細胞を攻撃するのではなく、もともと体内に備わった母自身の「免疫」の力を利用して、がん細胞への攻撃力を高める治療法です。

今回は、後者の治療法でオプシーボによる治療を進められました。
これは手術による治療が難しい患者に認められており、多臓器転移の母に該当します。

以前はメラノーマの治療法が無かったのですが、現在はいくつか認められています。
その一つがオプシーボであり、効果は3割です。
また、同時に遺伝子の型を見極め、ある遺伝子タイプに効く薬もあるとのことです。
こちらは自費検査となり約8万円の費用がかかります。

まずはオプシーボ、1回30分以上かけて点滴を投与し、4週間ごとに投与し続けます。
初回を除いては、外来での治療が可能であり、働きながら受けられる治療法です。

もちろん、副作用が出現する可能性もあります。
間質性肺炎、糖尿病、重症筋無力症など。
それは、自分の臓器に対する過剰免疫反応が起こった時です。
要するに、自分の臓器を自分で攻撃してしまう可能性です。
その兆候を見極める検査をしながら、治療を続けていきます。

決心の最終は母

後は、その副作用のリスクと治療効果のどちらを取るかです。
母の但し書は「元気な状態での治療効果」です。
しんどくて長生きし、どこにも行けなくなるなら、今の時間を大切にしたいです。

副作用のレベルは、対処療法で改善していく人もいるので何とも言えません。
「まずは予約を取って、考えてみては」
先生の待つ姿勢です。

本人の選択って、本当に大切だと思います。
自分で決めたからこそ、乗り切れるのですから・・・

********母が親戚に送ったメール(現在の気持ち)********
桜が咲きよい季節になりました

実は2月末ごろ風邪気味でなんとなくレントゲンや胃カメラの検査をしました
結果、肺癌の疑いと胃の中も黒い斑点がありメラノーマと言われて何が何か分からない気持ちでした
家族もそれぞれの気持ちで精一杯受け止めています

4月10日(水曜日)ペット検査の結果説明があり、肺や胃袋、お尻の筋肉内など、色々と指摘されました、悪性です

夫のこともあり、覚悟はしていましたが気が遠くなりました
今さら治療はしないと思っていましたが周りの考えや治療の進んでいる説明がありなかなか納得出来ていないのですが、22日(月曜)に入院治療することになりました

夫は囲碁が大好きで午後2時~5時半まで毎日車で送り迎えをしています
その間、買い物や家事が出来て助かります
そんな日時も愛おしく感じられます

今日はその時間久しぶりにプールに行って来ます
今は全く体調は普通です 食欲あり、旅行も海外でも行けそうですよ
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【続き 第8回 母の死生観】