テーマ1 ママの医療
【第6回】未完了を完了へ
感謝を言葉や形で伝える
母の場合の未完了とは、気になることが心の中に在り続け「やりたいな」「いつかは・・・」と、思い続けていることを言います。
振り返ってみると、告知後の母の行動は、それを完了するための行動で占めています。
例えば、大切なことリストの作成、取り組み中の公正証書の作成は、私たちへの感謝の気持ちだと言います。
自分から調べ、知人から情報を集め、すでに公正役場に行き進めています。
文章を何度もチェックし、父にも確認してもらっています。
私は、次々進めていく母のパワーに驚くばかりです。
また、鳥取への一泊旅行から帰ってきた母の顔は晴れ晴れしていました。
なかなか行けなかったお墓参りに2回行けたそうです。
これまで墓守くださった方に感謝を伝え、今後は墓じまい頂いても構わないこと、どうしても伝えたかったようです。
「了解しました、でも私が元気なうちは任せて、その機会がきたらそうさせてもらう」
先祖から私たちに受け継がれる、確かに今もある互いの”絆”に気づかされます。
旧友との絆
母の年齢になると、会える人が少なくなってきます。
出かける前に、3人と会えるかしらと、つぶやいていました。
3人とは、母にとって小学校からの旧友です。
とりあえず、予定は未定で、メインの人にだけアポイントを取って、まずは現地入りです。
結果、皆さんと会えたようです。
1人は特養に入居中とのこと、3人で母が借りたレンタカーに乗って会いに行ったそうです。
皆さんに自分の病気について説明し、もう会えなくなることを伝えたそうです。
同年代ならでは、懐かしさと痛いほどわかるそれぞれの境遇に、色々あったけれど、良かったねと分かち合ったそうです。
母らしい選択
もう一人、遠方の方に会いに行った時のことです。
この方も学生時代からの長いお付き合いです。
会うと同時に、飛び跳ねるように喜んでくださったそうです。
「元気でよかった」「会えてよかった」「私たちはがんばろうね」
1人で今を保っている友人を前に、自分の病気については話せなかったようです。
「これで良かったのよ」
帰ってきて、友人が全身で喜んでくれる姿を思い浮かべて微笑んでいました。
「そうね、良かったね」
私からは、今までなら定番の「また今度行けばいいよ」の決まり文句が出ませんでした。
でも、母のスッキリした表情から、母が見つけた答えなのだと実感します。