テーマ1 ママの医療
【第4回】余命を知ったら
ありのままの母
「何かしていると忘れてるの」
「でも寝る時は思い出す、寝れない、ずっと寝てない」
「お腹も空かない」
「何も食べてない」
確かに何かをしていると、いつもの母です。
いつものように会話し、晩御飯を作り、笑顔で過ごしているのです。
でも、一人の時間はやっぱり考えてしまうようです。
「いっつも、いっつも、心にモヤがかかった感じがする」
「そうだよね」
そのままを受け止めるだけの私たちです。
母の強さ
一方で、母の強さを実感します。
また一つ、母から学んだことです。
自分から、周囲にガンについて伝え始めたのです。
自分から、会いたい人のところへ出かけ始めたのです。
するとどうなるか、忙しいほどのアポイントが返ってきます。
母の知り合いや仲間が、母のために出来ることをやってくれるのです。
一緒に涙し、今が大事と励ましてくれます。
食事会に声をかけてくれる人、訪問してくれる人、皆さんの精一杯の気持ちが伝わってきます。
何よりも母が喜んでいます。
この反応は、まさに母流の人との関係性が導いてくれているのです。
凸凹に変化する気持ち
私はそのことが純粋に嬉しく、また、気付かされたことでもあります。
娘では埋めてあげられない、心の隙間を埋めて下さることに感謝します。
それでも、死を意識せずにはいられません。
夜一息ついていた時、母が落胆しながらつぶやくのです。
「わたしどうなるんやろ」
「死ぬのってしんどいんかな、嫌やな」
その時父が一言。
「心配せんでいい、先に逝っとけ、後から逝ったるから」
「ほんと」と少し甘える目をする母。
「逝ったる、逝ったる、待っとけ、なるようになる」
父は、CT検査で確実に動脈瘤が大きくなっており、2年以内と宣告を受け早2年が経過します。
要するにいつ破裂してもおかしくない、そんな状況の毎日です。
私が思わず、「え?パパが後から逝くつもりかい?」
「そうや、どうやらそうなりそうや」
「え〜〜、それ困るわ」
思わず爆笑の3人でした。
不思議と気持ちが軽くなる瞬間です。
同じ境遇の父の一言で、死に対する捉え方に別の選択肢が生じた気がします。
父にとっての母、母にとっての父、私たちにとっての両親、それぞれが大きな存在です。