テーマ1 ママの医療
【第37回】疼痛管理
左手が訴える
体位交換で首を右から左に動かした時、眉間に皺が寄りました。
「ごめん!」
つい、急に動かしてしまいました。
私たちでも同じ姿勢を長く続けて、急に動くと筋肉や筋が固まり痛みが生じます。
痛いはずです。
表情が語っているのです。
12月29日(日)、腹部を摩る動作が連続します。
この時はまだ水様便が続いています。
バイタルは、体温37.4度、血圧140代、SPO298%。
タオルケットを剥ぎ、動かないながらも全身で症状を訴えているようです。
手を天井に上げ、何かを掴もうとするような動きが見られます。
「ママ」と声をかけ握ると、左手に力が入り、聞こえていることがわかります。
疼痛緩和
今までとは違う表現であることは確かです。
疼痛緩和としてジクトルテープ75mgを一枚貼りました。
この貼付薬は継続して貼り続けることが必要です。
12月30日(月)朝、同じようにお腹を摩るので、もう1枚貼りました。
しかし血中濃度が安定し、効果が最大化するまでに約1週間はかかるようです。
この日は排便はありませんが、お腹を摩る行動は続きます。
ここから先は、痛み止めをしっかり使う段階です。
麻薬系剤のフェントステープ0.5mgも貼りました。
ジクトルテープよりさらに効果があります。
しかし効果は、血中濃度の安定まで2、3日かかります。
両方とも24時間ごとに張り替え、継続していく薬です。
そう思うと、ジクトルテープは、もう少し前から貼っておいた方が良かった薬です。
腸の音が「グルグル」とはっきりと聞こえました。
やはり痛そうなので、麻薬系のアンペック坐薬10mgを1/3だけ入れました。
翌日、12月31日は排便もなく、痛みもなく穏やかな状態で、モーニングケアを受け入れていました。
しかし、夕方顔をしかめ始めます。
そのため、アンペック坐薬1/2を挿入しました。
1月1日も穏やかに過ごせ、夜にアンペック坐薬(カットした残の約1本分)を使用したのが最後でした。
結局、麻薬系は、オプソ内服液5mg1包、フェントステープ0.5mg4枚、アンペック坐薬10mg2本だけ使用したことになります。
疼痛管理では、単に寝かせてしまうのではなく、痛みがなく、意識があって穏やかな状態を目指していました。
父が病院でショットを徐々に増やしながら、コントロールしたのを思い出します。
苦しくなく、かつ私たちの話し声が聞こえている、そんな状態です。
使いすぎると、深い睡眠に入り目覚めることはなくなります。
苦しんでいるかといえば、その段階でもない微妙な状態でした。
ガン性疼痛がさほど無かったことは、母にとっても私たち家族にとっても幸いでした。