テーマ1 ママの医療

【第32回】おかえりなさい

家はいいな

13日、介護タクシー(寝台車)に迎えられ病院を後にします。

「お母さん、慕われてたんですね」
「エレベーター前まで多くの看護師の方々が見送りにいらしてましたね」
「あれ、当たり前ではないですよ」

その言葉を聞いてよぎりました。
病状が悪化し理解力が低下しても、周囲に感謝し、褒める母。
前頭野の脳腫瘍が大きくなると性格が変わってしまうと言われて気にしていた母でしたが、最後まで母らしさが優ったようです。

さて、久しぶりの我が家です。
家の匂い、庭の木漏れ日、父の遺影、帰ってこれたことにホッとした様子です。
「やっぱり家がいい」
嬉しい言葉が返ってきました。

一月間、動きがない冷たい空気の実家でしたが、生活という時間が帰ってきました。
家も人が住むことで喜んでいるのがわかります。

関係者の力

1番に訪問介護とケアマネがいらしてくださいました。
重なるように訪問看護の方もです。

追って在宅医が到着され開口一番の一言。
「点滴が手に入りました」
「これだけ望まれているのに、出来ませんとは言いたくなかったんですよ」
この先生にお願いして本当に良かったと改めて感じ入りました。
どこまでも家族とともに”コト”を見つめようとされるその姿勢に、これから頑張れそうだと思えたのです。

看取りまで請け負う一大プロジェクトです。
薬局、訪問入浴を含めると15人ほどの人が関係されます。
この方々のおかげで、家族が家族らしくいれるのです。

知り合いの力

近所の知り合いの方々が、顔を見に来てくれます。
親しい方が、肉じゃがを作って持って来てくれます。

何よりも依頼していた近しい方Iさんは大活躍です。
小さいころから、母と知り合いです。
鳥取の田舎で過ごした思い出話があります。
その方が作る手料理はまさに母の好きな田舎料理です。
美味しいこと。

食べ物の嗜好がそっくりで驚くほどです。
病院食を食べなかった母ですが、在宅へ戻り食べるようになってきました。
介護する私ども姉妹の心の癒しでもある郷土の味は、食卓の話題に花が咲きます。

食べながら、ワイワイガヤガヤ、私たちが話している姿を母は見ているのです。
母の見えるところで、お料理もしてくます。
料理番組を欠かさずに見ていた料理好きの母は、その手元をじっと見ています。
家族だけでは出せない母の力です。

週の流れ

訪問介護:月〜金(午前・午後)祝日も実施
訪問看護:月〜日(午前・午後)点滴なので365日
訪問リハビリ:火曜日・金曜日
訪問入浴:土曜日
訪問診療:月2回以上状態に合わせて
薬局:末期に合わせたオーダーにそって麻薬など頓用薬を持参(いつでも対応できるように)

今の家族の願い
排便が座ってできるといいな
年末年始にホテルで過ごしたいな(往復介護タクシー・ホテルでは私が対応)

ここに来て3段階目くらいのレベルダウンでやや平行線です。
あきらめない、これは我が家のポリシーです。

【第33回】家での様子