テーマ1 ママの医療

【第28回】自立支援の足掛かり

状況を縦軸・横軸で捉える

科学的な視点では、身体機能、脳機能の診断から転倒リスクは明らかです。
明確なエビデンスがあります。

一方私の判断を駆り立てるものは、「本人が一番望むこと」です。
そこから逆算して検討に入ります。
これは、生きる治療です。

課題を解決する際、縦軸(状態を段階的に捉える)、横軸(時間経過)で考えます。

与えられた資源は何か?(介護保険や医療保険の適応範囲)
眠っている資源は何か?(近所の方へ協力を求める)
そして、本人のレベルを縦軸、横軸で見通します。

放射線治療前は、10秒ほど立位を保ちつつ、右腕は動かず、左足の力が入りにくい状態でした。
そこで、リハ担当にお願いして、馬蹄型でコロ付き歩行器を使っての移動をお願いしました。
しかし右側から崩れてきて難しい。

排泄行為は、壁に持たれパンツの着脱ができるかをチャレンジしてもらいました。
しかし、バランスが取れず立位でパンツの上げ下げはできません。
それなら、ベッドの横にポータブルを設置し、パンツの着脱をベッド上で可能か否か。
それでも無理なら、夜間一人の時間はオムツで対応、翌朝の訪問介護まで続きます。
これも、時間が経過するとレベルダウンしてくるので、単なる出発点です。

このように、ここから先は、微妙に変化する本人のレベルに合わせて、微調整を行なっていきます。

自立支援とは

その時々で、必要不可欠な支援や工夫を繰り返すため、決して余裕はありません。
そのため、本人もその時々で、持ち得る力を最大限発揮するのです。
これが「自立支援」なのでしょう。

自立とは、本人が望む何かがあるから、自立行動に駆り立てられるのだと思います。
どんなレベルでも、本人の中に、苦しくても守りたい何かがあるなら、それを応援したい、家族としても専門家としてもそう思うのです。

放射線療法5日目が終了し、しんどさがピークに達しています。
「もう死にたい」
「しんどい」

そんな時
先生のこんな言葉が心の支えです。
「このしんどさは、必ず良くなりますからね」
この言葉で、指を折って数え始めるのです。

私たちのこんな言葉が希望を与えるのです。
「ママ、今日自宅を整理してきたよ」
「帰る準備してるからね」

「うん、家に帰りたい」
弱々しい声が、しっかりする瞬間です。
何のために、この辛い治療を選択したのかを再自覚するのです。

【第29回】脳腫瘍の増大