テーマ1 ママの医療
【第21回】クルージング旅行(急変編)
体調に変化が出始める
楽しい時間を過ごしつつも、右腕が徐々に動かなくなってきたのです。
体の動きに少し遅れるように右腕がついてくる、そんな様子です。
私が他動的に動かすと、痛がるのです。
自分で意識すると、ちゃんと動くのです。
「気になるな」
「うん」
旅行前日は、いつものようにスイミングでクロールしていたのです。
旅行当日も、荷物を運ぶのを手伝ってくれていました。
函館観光はしっかり楽しみました。
しかし、徐々に下着を下ろすのが間に合わずトイレを失敗しがちになり始めたのです。
秋田観光から帰り、疲れた様子で少し横になりました。
少し熱発し、血圧の薬を飲み忘れていたとのことで服薬します。
血圧計を借りてきて測定するとやや高めです。
2時間ほど寝たら、スッキリしたと本人、なんとか夕食のディナーは参加しました。
気分を切り替え、ドレスアップしての参加です。
結果、相対的に楽しかった状態です。
夜中のトイレに失敗したのか、着替えが置いてありました。
夜中音に気づくと、ヘルプに入りました。
早朝、気分がすぐれず横になっています。
血圧の数値に問題はありません。
本日の金沢寄港は、参加せず寝ていると言います。
昼食は、希望のものを準備してテーブルに置いておきます。
心配な反面、母の気遣いになってはいけないので、他の2名と下船し観光へ出かけました。
夕方に戻ってきたら、準備していた昼食のデザート以外は食べていません。
はやり、トイレには履き替えた下着が置いてあります。
トイレに誘導すると、右足のスリッパを履かずに歩くのです。
「スリッパ履いてないよ」
「ん?履いたつもりだけど、履けてないね」
なんとなく、右側に変化が出てきています。
明らかな変化
翌早朝、トイレに行きたいと立ち上がります。
大きく右側に傾き起き上がりずらい状態です。
私がサポートし、体の軸を整えます。
母のベッドは、窓側、要するに奥に位置します。
そのため、手前の私のベッドや壁の間の狭い空間を歩かなければいけません。
やはりフラフラ、右腕に三角巾を巻き、右側を支えて立ち上がりを補助します。
トイレに行き、排泄を済ませます。
歯磨きを希望し自ら済ませます。
椅子に座って待っててもらい、その間にベッド周りを整えていました。
すると、ガンといった大きな音が鳴ったのです。
振り返ると、母が倒れています。
足が絡んで、バランスを崩し、頭の側頭を強く打った音です。
「え?!」
「痛い」と叫び、座り込みます。
頭のジンジンする痛みを訴え、15分ほど時を待ちます。
血圧は正常、会話可です。
しばらくして、立ち上がりをサポートするのですが、全く立ち上がれません。
浴室と部屋の段差に座り込んでいる状態です。
姿勢は、低い位置で腰掛け体育座りをしている状態です。
右腕も右足も痛いらしく、立ち上がると崩れてしまうため立てません。
何度試みても動けないのです。
私も、ボディーメカニクスを駆使してトライします。
しかし、右側に触れると痛がるため、アシストも不可能な状態です。
人を呼ぶにしても、ドアの前に座っており完全なる障害物です。
何度も声をかけ、よいしょと試み、時間だけが過ぎていきます。
「しんどい」
「寝たい」
「そうだよね」
「どうする私」と自分に問いかけ、知恵を絞ります。
そして、大きなバスタオルを地面に敷き、そこに寝転がってもらうことにしました。
狭い空間で、右斜前にしか倒れるスペースがありません。
しかし、右側は本人が痛がるため倒れる時にはリスクがあります。
少し高めの位置から、せいのゴロン。
「イタタタ・・・」
「ごめん、ごめん」
右腕も足もグニャっとなりがちで当然です。
予期せぬ姿勢で骨折に繋がっていないことを願うばかりです。
早々、右足を屈伸、関節を回し、右腕を縦横に動かし、痛みの具合を確認します。
痛がってはいますが、骨折ではなさそうです。
バスタオルを広いスペースへ引っ張るのは容易でした。
その後、体の下に2枚目のバスタオル、沢山あるクッションを敷き詰めます。
簡易ベッドの完成です。
しばらく寝てもらうので、床の温度で体が冷えない対策です。
本人はやっとホッとした顔です。
「水飲む?」
「うん」ストローで吸い上げます。
「ヨーグルト食べる?」
「うん」介助しながら、ハチミツヨーグルトを食べてくれました。
しばらくすると、スースーと寝息が聞こえてきます。
さて、本番はこれからです。