テーマ1 ママの医療

【第1回】突然訪れた現実

健康チェックのはずが

3月初旬、「急な便意や下痢がある」と相談してきた母に、「最近してないから大腸カメラでもやってみたら」と返答したのが始まりでした。

我が家には、行き着けの消化器専門クリニックがあります。
今までも両親は、自分の判断で適宜検査を受けてきました。
大腸カメラの予約を取りに行き、当日できる胃カメラと肺のCT検査を実施してもらったそうです。
胃カメラは絶食していけば当日実施が可能で、肺はレントゲンで影が認められCT検査に至ったのです。

一方、10日後の大腸カメラは、検査当日に風邪をひき延長となりました。
ほどなくしてクリニックから電話があり、家族同伴で検査の結果を聞きにくるように言われたのです。
要するに胃と肺の検査結果についてです。

病院からの呼び出しは、最短で結果を知らせたい場合ですが、すでに胃カメラから約3週間経過しています。
通常細胞診は1週間もあれば結果がでるので、それ以上の特殊な検査に出されていることがわかります。

家族の気持ちはモヤモヤでいっぱいです。
私の中には、良い方に考えたい自分と、最悪を想定した自分が行き来していました。
職業柄、後者を想定し、母とそれを取り巻く環境を考え、水面化では、父の介護の再調整に入ったのです。

想定外の結果

診察日当日、良くない結果は覚悟していたものの、それを超えた想定外の結果でした。

胃に悪性黒色腫(メラノーマ)が認められたとのことです。
先生いわく、長らくこの仕事をしているが初めての診断名だと言うことです。

一般にメラノーマはメラニン色素の多い皮膚の表面にできるのですが、稀に臓器などにも出現します。
検査に時間がかかったのは、確定する上で染色検査を経ていたからです。
肺の影も、それに準ずる(転移)と考えるのが妥当とのことでした。

実は、母にはメラノーマの既往歴があります。
20年前に足の踵に発生し手術で切除していたのです。
当時メラノーマの有効的な治療法はなかったのですが、母の場合、ステージ1で留めることが出来たのです。
あれから20年、先生いわく、その再発とは思えないなと。
とにかく今できることは、最短で大学病院へ受診することだと手配して下さいました。

母の気持ち

診察室へ入室前、母から「おそらく混乱するから録音させてもらって欲しい」と頼まれました。
そこで先生に許可を得て録音させていただきました。

娘2人の間に座っている母は、冷静でした。
先生の話を聞きながら、驚きとやっぱりなという気持ちが交差した表情です。
交互にする娘たちの質問、それに答える先生の回答に頷き、自分の様子が分かってきました。

「先生、私治療なんてしたくないんです、今なんともないのに」
信じられないし、知りたくなかった、今なんとも無いのに、これが母から湧き起こる気持ちです。

「そうですね」
「おいおい考えるとして、まずは詳しいPET検査をして、同時に専門の皮膚科を予約した方がいい」
「とにかく1日でも早くです」
先生として、この段階でできる最大限の的確な対応です。

娘2人に「どうなるんやろ」「もう嫌や」と話す母に、側にいて頷く私たち。
現実味がない事実を知って、再度待合室で座っている私たちです。
どんよりと落ち込み、モヤモヤだけが広がります。

一方で、必死で予約を取ってくださる看護師さんとのやりとりが現実へ引き戻して下さいます。
今できることは、最短で検査や受診ができるよう調整することしかない、それだけは後悔したくないと思わせてくれるのです。
4日後に大学病院の受診、10日後にPET検査、全て最短の調整です。

【次回 第2回 大学病院初診と今後】