テーマ1 ママの医療

【第18回】萎える気持ちをどうする?

旅行への気持ちが萎える?

5日後のクルージング旅行を楽しみにしていた母が消極的になっていきます。

クルージング旅行の楽しみといえば、食事やパーティですが、人前でご飯を食べる姿を見せたくないと感じています。

2ヶ月前、メラノーマの進行が早いことが発覚し、旅行の計画を早めた時は、何不自由なく動け、食欲旺盛だったわけです。
もう少しという直前に、右手指の麻痺が出現、日に日に症状が悪化し、物を掴んでいる感覚がなくなっています。
お箸を5回も6回も落とします。
腕まで痺れがきているようです。

今まさに、現実的な対応策が必要だと感じました。

箸ぞうへ

京都にある障害者用のお箸を開発し、取り扱っているお店の情報をキャッチしました。
普段は見過ごす情報も、自分ゴトとなると目に止まるものです。
そして藁をも掴む思いでお店に電話しました。

話を聞くと、症状に合わせてアドバイスしてくださることがわかり、即、母を連れていきたいと思いました。
しかし翌日土曜日は予定があり日曜日、祝日(月)と定休日が続き、火曜日は旅行の出発日です。
その事情を店主に相談すると、祝日午前中にお店を開けて下さる提案をくださいました。
どれだけありがたかったことか・・・

症状に合わせた数種類の箸を試しました。
日常使いの箸、菜箸と購入しました。
母もこれなら使えるかもと一安心の表情を浮かべていました。

左手の選択

しかし結局、右手を使うことにはかなりの困難があります。
腕そのものを意識して動かせば、大きな動きはできます。
しかし、動いても指令が届いていないようで思うように動作しません。
手指なら尚更です。
自分の手とは思えない、掴んでいるつもりが掴めないとのことです。
握力はあるが、指先には指令がいかないようです。
そのため、つるん、つるんとお箸やスプーンが抜けてしまいます。

そこで購入した箸を、左手で使うようにしました。
お箸が使えるだけでもありがたいことです。

現状とパパ

今までのように、動いているようで動いていない腕と指です。
しっかりと手を見て、動かすことへ集中しないと動いてくれません。

”手を開く” ”掴む”の指示出すと、何とか、何とか動くが、的も外れます。
せいの、よいしょ、どっこいしょ、私の掛け声で何度もチャレンジします。
半分泣き笑い、情けないし、こっけいだし、そんな母によいしょと声かけしている私との二人三脚です。


「パパが見てたら、そうやろ〜って言うやろな」


「なんて?」


「パパがなった者にしか分からんと、そうせかすなと」


「そう」


「今やから分かる」
「できない自分が情けない」


「でもパパは、自分の姿を惨めだとか情けないと定義してなかったよ」
「これも自分やと」
「受け入れて堂々としてた」
「だから、自分が自分らしくあるために、人に頼ることも厭わなかったよ」


「うん、そうやね」


「パパなら言うよ、それも受け入れてママらしくと」


「ほんまやね、捉え方やね」