テーマ1 ママの医療

【第15回】乳房転移?寿命?私がすべきこと

ちょっと気になっててね

オプシーボの治療5回が終了し、副作用もなくホッとしていたこの時期です。
母は、ちょっと気になってることがあると、治療日ではない日に受診をしてきました。
左胸の表面に、コロコロと硬いものが触れ、検査の為、切開して取ることになりました。
それから1週間、本日は、妹と2人で検査に立ち会いました。

切除後の断面が黒っぽい

切除後の説明で、断面が黒っぽいことを告げられました。
やっぱり・・・

「検査に出してみないと断定はできませんが、おそらく転移でしょう」
「オプシーボが効いてないのか、もしくは効いているからこのスピードで済んでいるのかは、わかりません」
「結果によっては、薬を変える方法もあります」

母は、どういうと少し理解出来ていない様子でした。
「進んでいるってことですか?}

「そうとも言えます」

「先生、来年までもちませんか?」
「来年、娘とクルージングの日本一周旅行に申し込んだんです、4月です」

「ん~何とも言えないところです」

「そうですか・・・」
「がんが進んできたら、痛くなるの?私痛いのは嫌」

「出来るだけ、痛くないようにしますね」
「皮膚科だけでなく、緩和ケアの先生とも連携していきます」

今・ここと最期を行ったり戻ったり

私自身が、現実感のない感覚で、先生のお話を聞いていました。
それは、母でも同じことでしょう。

そのため、今診察室で交わされている会話は、これからどうなっていくの?の一色です。
どちらかといえば、それしか会話する内容が見当たらない、何かしゃべっていたい、そんな気分でした。
到底、生きる意味を考える時間にはなりません。

細胞診の結果を待たずして、おそらく黒色腫の転移に間違いないだろうことを知りました。
母の気持ちを思いつつも、動かせない現実に、私はどのような言葉をかけるのだろう。
「しかたないね」とつぶやく母。

医療者であってもピンとこない

さすがにまだ来年は、生きているような・・・私の気持ち?願望?
専門家であるはずの私ですが、いまだにそのように感じるほど、今の母は今まで通りです。
こっから、何がどう変化するのだろう?
急激に変化してくるのか?

沢山のケースに関わってきたものの、描き切れない私がいます。
冷静に理性的に捉えているのですが、どうしてもピンとこないのです。
父の時は、循環器の疾患で、CTを撮る度に瘤が拡張し、本人を含め家族みんなが覚悟するという時間がありました。父は、来るときが来たら仕方がないと達観していました。
きっと、父が生きていたら、父がかける言葉こそが、何よりその道に立っている者として、本日の母の励みになった事と思います。

私にできること

今の母が、どれだけ落ち込んでいることか・・・
そして、人が誰もが通過するプロセスなのだと、改めて実感しています。

そんなことを考えつつ、気づいたら、旅行会社へ電話をしていました。
来年の4月のクルージング旅行日を、急遽この11月に変更していました。
私の時間のやりくりは何とかできる、でも母のタイムリミットは何ともできない。
おのずと、答えは出てきます。

㋈も仙台旅行を入れました。
楽しみや目標があれば、こころに占める内容が違ってくると。
そう、私ができることは、母のこころに占める時間を、病気のことではなく、楽しいこと、家族のことで制覇することです。
私と病気との勝負に挑みます。

【第16回】仙台旅行