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2016・9・15 ダイジェスト版 レクリエーション介護士の日記念イベント
基調講演「レクリエーションの未来」 ~私は何をしたらいいのか~
5日前にメラノーマの告知を受け、本日は紹介された大学病院皮ふ科の初診日です。
土日を挟んだ最短での受診です。
そのため、私たち3人は、何時間待たされてもありがたいと思い待っていました。
受付から2時間以上が経過したころ、診察室へ呼ばれました。
先生が自己紹介してくださいました。
「10年前、足の踵で気になると再受診されましたよね?その際に対応させて頂いた医師です」
「あの時は再発でもなんでもなく良かったですね」
母の表情が少し和らぎます。
「クリニックからの紹介状を拝見し、当時の記録も読み返していました」
「今回は、メラノーマが消化器にできる稀なケースだと思われます」
「以前のガンは20年以上前、転移しているかと言われると難しいところです」
「ん〜リンパ節転移では無いでしょう、鼠蹊部のリンパ節が腫れた訳でもありませんしね」
「後は血行性転移が考えられます」
「20年が経過して大変珍しいです、年齢とともに抵抗力が低下することで起こってくる可能性があります」
「消化器に出現とは、珍しいですが、無いわけではありません」
「肺ガンも原発性(通常のガン)もあり得ますが、この流れからメラノーマの転移と考える方が自然です」
「予約いただいたPET検査の結果で明らかになりますが、治療方法は化学療法が妥当かと思います」
「オプシーボと言われる免疫療法です」
「先生、私治療したくないの」と突然言葉を発した母。
「そうなんですね」
「はい、せっかく今、元気なのに、しんどくて長生きするなら、このままの方がいいような」
「そうですか、実は20年前、メラノーマに効く治療方法はなかったのですが、今は一定の効果がると、免疫療法が認められています」
「一般の化学療法とは違う治療方法です」
「一般の化学療法は、元気な細胞も含めて滅殺してしまうので、おっしゃられていることが起こりやすいです」
「ただこの免疫療法は、自分の免疫を高めるよう働きかける治療なので、脱毛などをはじめ、イメージしているのとは少し違うものです」
「4週間ごと、通院しながらの点滴治療で、それ以外は普段の生活が送れます」
「もちろん、副作用もあります、そのため治療をしながら経過を見ていきます」
「先生、やらなければ、どうなるんですか」
「やならいと、それなりに進行すると思います」
「確かに、それでもと治療をしないという選択肢もあります」
「ただ、懸念されているような治療ではなく、一度やってみる値打ちはあるとは思います」
「今、お元気で過ごされているからこそ、免疫治療という可能性から考えると、もったいない気がします」
明らかに、治療の値打ちがあると考える、家族や先生。
一方で、今の生活の質が落ちるなら選択したくないという母。
母の立場を尊重する、無理には進めない、そう決めて臨んだ診察でした。
ひたすら先生の話を聞きながら、治療を途中で中断することも可能である点を質問しました。
要するに、行って戻っての治療ができるのかを確認したかったのです。
生活の質を落とさない、でも、抗がん剤とは違う治療なので望みをかけたい。
これが、私たち娘が望む着地点でした。
後は、母の気持ちの変化を見守るしかありません。
先の将来を、どのくらいの長さで受け止めるのか、母にしか分かりません。
共通の望みは「笑って過ごせる時間を大切にしたい」です。
私たちが傍にいます。
3月初旬、「急な便意や下痢がある」と相談してきた母に、「最近してないから大腸カメラでもやってみたら」と返答したのが始まりでした。
我が家には、行き着けの消化器専門クリニックがあります。
今までも両親は、自分の判断で適宜検査を受けてきました。
大腸カメラの予約を取りに行き、当日できる胃カメラと肺のCT検査を実施してもらったそうです。
胃カメラは絶食していけば当日実施が可能で、肺はレントゲンで影が認められCT検査に至ったのです。
一方、10日後の大腸カメラは、検査当日に風邪をひき延長となりました。
ほどなくしてクリニックから電話があり、家族同伴で検査の結果を聞きにくるように言われたのです。
要するに胃と肺の検査結果についてです。
病院からの呼び出しは、最短で結果を知らせたい場合ですが、すでに胃カメラから約3週間経過しています。
通常細胞診は1週間もあれば結果がでるので、それ以上の特殊な検査に出されていることがわかります。
家族の気持ちはモヤモヤでいっぱいです。
私の中には、良い方に考えたい自分と、最悪を想定した自分が行き来していました。
職業柄、後者を想定し、母とそれを取り巻く環境を考え、水面化では、父の介護の再調整に入ったのです。
診察日当日、良くない結果は覚悟していたものの、それを超えた想定外の結果でした。
胃に悪性黒色腫(メラノーマ)が認められたとのことです。
先生いわく、長らくこの仕事をしているが初めての診断名だと言うことです。
一般にメラノーマはメラニン色素の多い皮膚の表面にできるのですが、稀に臓器などにも出現します。
検査に時間がかかったのは、確定する上で染色検査を経ていたからです。
肺の影も、それに準ずる(転移)と考えるのが妥当とのことでした。
実は、母にはメラノーマの既往歴があります。
20年前に足の踵に発生し手術で切除していたのです。
当時メラノーマの有効的な治療法はなかったのですが、母の場合、ステージ1で留めることが出来たのです。
あれから20年、先生いわく、その再発とは思えないなと。
とにかく今できることは、最短で大学病院へ受診することだと手配して下さいました。
診察室へ入室前、母から「おそらく混乱するから録音させてもらって欲しい」と頼まれました。
そこで先生に許可を得て録音させていただきました。
娘2人の間に座っている母は、冷静でした。
先生の話を聞きながら、驚きとやっぱりなという気持ちが交差した表情です。
交互にする娘たちの質問、それに答える先生の回答に頷き、自分の様子が分かってきました。
「先生、私治療なんてしたくないんです、今なんともないのに」
信じられないし、知りたくなかった、今なんとも無いのに、これが母から湧き起こる気持ちです。
「そうですね」
「おいおい考えるとして、まずは詳しいPET検査をして、同時に専門の皮膚科を予約した方がいい」
「とにかく1日でも早くです」
先生として、この段階でできる最大限の的確な対応です。
娘2人に「どうなるんやろ」「もう嫌や」と話す母に、側にいて頷く私たち。
現実味がない事実を知って、再度待合室で座っている私たちです。
どんよりと落ち込み、モヤモヤだけが広がります。
一方で、必死で予約を取ってくださる看護師さんとのやりとりが現実へ引き戻して下さいます。
今できることは、最短で検査や受診ができるよう調整することしかない、それだけは後悔したくないと思わせてくれるのです。
4日後に大学病院の受診、10日後にPET検査、全て最短の調整です。