テーマ1 ママの医療
【第20回】クルージング旅行(体験編)
私の実感
ほとんどが定年退職をされた方々の参加です。
今まで頑張って働いて、今この時を満喫しに来られています。
昼の談笑からカクテルを飲みながら話を弾ませます。
夜は毎夜テーマに合わせてドレスアップし登場されます。
なんというか、日本経済の底力を実感する空間です。
多くがペアで参加されています。
朝、昼、夜なく、それぞれのラウンジでは、ペア同士が談笑されています。
きっと、ここでお出合いになられた方々でしょう。
”袖振り合うも多生の縁”話は尽きないようです。
母や一緒に参加した知人のお二人も、ところどこで、その時の仲間を見つけます。
自分に自信があると、あらゆる人と交われるのだと思うのです。
もちろん、車椅子の方も杖の方も、皆さん堂々とされています。
これからの介護業界に必要なこと
虚弱、要支援、要介護と、どんなレベルであれ必要なことがあります。
それは、それぞれの自信に見合った、それぞれの興味・関心が必ず存在していることに気づくことです。
介護サービスに思わず動きたくなる要素がプログラムされている。
このために私は元気でいたい、だから頑張るんだ!を喚起させてくれる仕組みです。
今回のクルージング商品一つとっても、微に入り細に入り、喜びや満足ポイントが織り込まれています。
なるほどな、確かに買いたくなる設計が考え抜かれています。
ディナーでは、対面アンケートに協力させていただきました。
いわゆる市場調査であり、一次情報として、もっとも価値の高い情報です。
毎回インタビューをして、声を聞き、次回に生かすそうです。
とことん、喜びを作るマーケティング視点です。
介護業界はどうでしょうか?
介護というサービスを提供することは、当たり前のことです。
元気になるとはどういうことなのか?
リハビリとは何のためにするのか?
長生きの先には何があるのか?
私にとっては、”人のよろこび”を科学的に捉え体感する実体験の時間でもありました。
母もしかり
母もいつも以上に、笑って・楽しんでいます。
毎夜のディナーではテーマに合わせ、持参したドレスから選びます。
荷物を詰める時から、私がイメージしていた通りです。
「今夜はどれを着る?」
「ちなみに、これと、これを持ってきたよ」
選べる楽しさ、アクセサリーのラインナップも準備しました。
荷物が多かったはずです。
直前まで仕事に追われていた私は、荷物を準備し事前に送る時間の余裕がなかったのです。
大きな荷物3つと母を連れて、船まで辿り着くまでの大変さが、この瞬間に吹き飛びました。
最初はシャンパン、次に白ワイン。
左手でフォークやスプーンを使って食べます。
次々に運ばれる料理に、知人を含めた4人の談笑はつきません。
夕食が終われば、ナイトショーを見に行きます。
寄港先の函館では、タクシーで展望台へ。
芸能界でも有名な地元のラーメン店へ。
秋田では、国立美術館へ。
そして、また賑やかな夜がやってきます。
時が流れる体感スピードが違う
母には、宣言された余命の中で、大切な家族と、1回でも多く旅行がしたい。
美味しいものを食べて過ごしたいという強い思いがありました。
これを叶えてあげたい、私たち娘の気持ちです。
そのため、本来なら来年4月に取っていた予約を、急遽11月に変更したのです。
もちろん、来年行けたら更に良しです。
しかし、歳を取ると来年はあくまでも”おまけ”です。
思い立ったら、今が一番ベストなタイミングです。
この”時”の流れの体感スピードが、高齢者と若者では全く異なります。
そう、どんなに頭では分かっていても、人生に先がある子供の立場では実感しきれないのです。
”来年は行こうね”と思ったり、本来衰えている親の体力以上の盛りだくさんの旅行計画を立てがちです。
親元を離れて経年し、元気なイメージのまま捉えているとなおさらです。
無理もありません。
当事者である高齢者が、本当に分かってほしい点はこの点だと思います。
体力や調子の衰えは、見かけではわからない微妙な変化です。
そこが、本人しかわからない葛藤です。
寝床が変わっただけで、夜の寝つきが悪くなる方もいます。
楽しさを求めて旅に出ても、この苦労は別ものです。
ここもメンテナンスポイントです。
そういえば、母も”Myまくら”を持参しました。
これがサインです。
「持って行きたい」と言われたら、「そうなのね」で受け止めてあげたいものです。
自ら対策を提示してくれるので、ありがたいことです。